「たくさん走らせれば速くなる」ではありません|陸連が決めた、小学生の走る距離の上限
こんにちは、ぷでぃまです!
先に結論をお伝えします。走る距離を増やしても、子どもは速くなりません。むしろ走る距離を決めるより先に、走りたい気持ちを守るほうが先です。
どうすれば速く走れるようになりますか? うちの子、どんな練習をすればいいでしょう…
行事が一段落したあとに、この質問をよくいただきます。持久走やマラソン大会の相談という形では、あまり来ません。来るのはいつも「速く走れるようになりたい」という、もっとまっすぐな願いのほうです。
そして多くのご家庭が、その答えとして「たくさん走らせること」を選びます。ここが分かれ道になります。
この記事では、日本陸上競技連盟が示している基準を手がかりに、家でどこまでやるかの考え方をお話しします。
この記事で分かること
- 「速くなりたい」に距離を増やして応えると、なぜ遠回りになるのか
- 日本陸上競技連盟が決めている、小学生の走る距離の上限
- 走らせすぎた子に出てくる、分かりやすいサイン
- 家でやるなら3分から5分、という時間の考え方
- 順位やタイムの代わりに置いておきたい基準
「速く走れるようになりたい」と言われたとき

まず、私が現場で感じていることをお話しします。小学生の時期については、短い距離をしっかり走れる子が、長い距離も走れるという感じがあります。
もちろん、得意・不得意はあります。短い距離でつまずく子と、長い距離でつまずく子は、タイプが違うかもしれません。ただ、順番として先に来るのは短い距離のほうだと思っています。
ですので「速く走れるようになりたい」に対して、走る距離を伸ばす方向で応えるのは、私は選びません。
「もっと走らせよう」は、いちばん思いつきやすくて、いちばん遠回りになりやすい答えです。
リレーの選手を目指す場合も同じ考え方になります。そちらは運動会でリレー選手に選ばれたい子へにまとめてあります。
陸連は、小学生の走る距離に上限を決めています

ここからは、私の考えではなく、競技を統括している団体が決めていることをお伝えします。
日本陸上競技連盟が示している小学生向けのガイドラインには、こう書かれています。トレーニングの頻度は週に2日ないし3日、1日1.5時間くらいとすること。そして1日の総走行距離は5kmを超えてはならないこと(1998年3月理事会承認。同連盟が現在も公開しています)。
同じガイドラインには、ほかにもこう書かれています。
- 無酸素性運動を避けること … 息が上がりきるような追い込み方はしない
- 高温多湿下での運動を避けること … 気温28度・湿度60%以上が目安として挙げられています
- トレーニングは土や芝生の上でなされること
- 長距離の練習に偏らず、オールラウンドな体力と運動能力を発達させること
さらに、このガイドラインは末尾で、全国小学生陸上競技交流大会に中・長距離種目を採用しないことまで決めています。全国大会から、種目そのものを外しているということです。
親御さんとしては驚かれるかもしれません。ただ、現場にいる側としては驚きはありません。
大会そのものが、なくなっています
これは考え方の話にとどまりません。日本陸上競技連盟が主催していた「全国小学生クロスカントリーリレー研修大会」は、2019年度の第22回をもって終了しています。
終了を知らせる同連盟の文書には、理由がこう書かれています。過度な競争や強化の助長により子ども達への負担が高まることを避け、安全で楽しい活動環境の確保・拡大を図るため(日本陸上競技連盟「“日清食品カップ”全国小学生クロスカントリーリレー研修大会について」2019年10月)。
1998年のガイドラインを受けて始まった大会を、同じ団体が20年後に自分の手で終わらせた、ということになります。
日本陸連が2025年に公表した育成年代のガイドラインでも、多様な種目経験を勧めています。早い時期に一種目だけへ絞らないことも示しています。長距離だけに偏らず、負担を適切にする考え方です。
こうした動きを見ていると、長い距離については今後も控えていく方向なのではないか、と私は思っています。ここは私の見方です。
私は、5kmより手前で止めています
そのうえで、私自身の指導方針をお伝えします。長い距離を走らせるということは、小学生の時期にはしたくないことです。中学生についても、走り込みはそこまで追っていません。
つまり「5kmまでなら走らせていい」ではありません。上限が5kmだとしても、私はその手前で止めます。
たくさん走らせても、速くはなりません

走る距離や分数は、今ある子どもの体と気持ちを見て決めています。決まった数字を全員に当てはめることはしていません。
そして、何より避けたいことがあります。走らされているという感覚になることです。ここがいちばんまずいところだと思っています。
自分から走りたい、楽しいな、気持ちいいな。そう思えるような距離であり、分数であること。そこがとても大切になってきます。
量を決める前に、その子が今日どんな顔で走っているかを見てください。
走らせすぎた子に出るサイン
私が見てきた中では、長い距離を走らせすぎた子に変化が出ることがあります。走る前に、休む理由を探すようになります。
- 足が痛いから休みます … 走る直前に言い出します
- 気持ち悪いから休みます … これも走る前です
- 走りたくないな、嫌だな … 口に出るようになります
そして最終的に、長い距離を走らなくなってしまいます。私が見てきた中では、体を痛める前に気持ちが離れていきました。
今日はちょっとおなかが痛いから、見学してていい?
痛みや気持ち悪さを訴えたら、まず練習を止めて体調を確かめてください。そのうえで同じ形が続くなら、走る量や気持ちも見直す合図です。ケガとの見分け方は成長期のケガ予防と成長痛も参考にしてください。
家でやるなら、3分から5分

では、実際にどのくらいならいいのか。私が現場で使っているのは、5分間走です。3分間走にすることもあります。
楽しく走れる距離というのが、だいたい3分から5分ぐらいかなと思っています。
おもしろいことに、先ほどのガイドラインも同じ長さをすすめています。持久的体力向上の運動処方として「5分間走」が勧められる、と書かれていて、その理由は心肺への負担が短いことと、フォームが崩れない時間であること、とされています。
私が3分から5分と感じている理由は「楽しく走れるから」で、少し違います。ただ、行き着く長さは同じでした。
距離を測らせない、という手もあります
家でやるなら、時間で区切るほかにこんなやり方もあります。電柱の間を走って、次の電柱の間は歩く。これを繰り返すだけです。
- 走る・歩くを交互に … 過度なトレーニングになりにくい
- 距離を数字で意識させない … 「あと何メートル」がしんどさを増やします
- 終わりが見えている … 電柱1本ぶんなら、子どもにも先が見えます
安全面は必ず確かめてください。道路を走るのであれば、保護者の方が付いていてください。ぬかるんだ場所や滑りやすい場所は避けるべきだと思います。
「気持ちいいくらい」なら、あっていい
追い込ませたくない、と申し上げてきましたが、長い距離を一切走らせたくないという意味ではありません。気持ちいいくらいの距離を走ることは、あっていいと思っています。
というのも、この時期は体力が育つ時期にあたります。日本スポーツ協会の資料では、身体の各器官は神経系、呼吸循環器系、筋系の順に発達するとされています。また、身長の伸びがいちばん大きくなる年齢は女子が9〜11歳、男子が11〜13歳とされています(日本スポーツ協会「発育期のスポーツ活動ガイド」2021年)。
体力テストで測る持久力が最も発達する年齢は、男子で11.4歳、女子で10.5歳と報告されています。ちょうど身長の伸びのピークの直後にあたります(飯田悠佳子「身体の発育と発達」日本アスレティックトレーニング学会誌2018年、大澤清二「最適な体力トレーニングの開始年齢」発育発達研究2015年)。
つまり小学校の高学年から中学生あたりが、持久力の育つ時期ということになります。だからこそ、その時期に走ることを嫌いにさせたくないのです。
同じ資料は、進め方についてもこう書いています。7〜10歳は、ゆっくりとした動きから激しい動きを交えた様々な種類の運動を、短い休憩をとりながら繰り返し行う。11〜14歳で、個人に応じて運動の強さと時間を配分したトレーニングにシフトしていく。
追い込ませない、というのはこういうことだと思っています。年代ごとの考え方はゴールデンエイジは過ぎたら手遅れ?でもお話ししています。
1メートルでも、1秒でも

最後に、走るのが苦しくて嫌がる子について書かせてください。
嫌いになる理由は、やはり苦しいことだと思います。ですので、一緒になって、苦しくない程度のペースで一緒に走ってあげてください。言葉をかけるだけでなく、行動を一緒に起こしてあげることが大切だと思います。
そういう子には、順位やタイムを追い求めないでください。代わりに置いておきたい基準があります。
- 1メートルでも走る距離が伸びたら … それで十分です
- 1秒でも時間が短縮できたら … もう花丸です
そのような声かけにしてあげてほしいと思っています。
去年の自分より1メートル。比べる相手は、それで足ります。
私自身のことも書いておきます。持久走やマラソン大会が好きだったかと言われれば、好きではありませんでした。ただ、1番や2番を取っていたので、そこの部分については嬉しかったです。
そしてそれは小学生の時期の話で、中学生になると自分より速い子はいっぱいいました。そうなると、長い距離を走ることはそんなに好きではなかったなと思います。
順位が良くても、好きになるとはかぎりません。だからこそ、順位以外の置きどころを用意しておいてほしいのです。
今日できる一歩は、走る距離を決めることではありません。お子さんが今どんな顔で走っているかを見ておくことです。走るなら、その日の体調を見ながら、まずは3分から 🌱