小中学生が速く走るために必要なこと|心・技・体の整え方と基礎練習
「運動会は、なんで全員が走らないといけないの?」
「走ることが嫌いなのに」
「最近運動していないから、走るのが嫌だな」
そんな声を、私は現場でよく聞きます。今からでも準備はできます。
なにも行動せずに速く走れるようになる魔法は、残念ながら存在しません。しかし、適切な準備と理解があれば、多くの子が走る力を少しずつ伸ばしていけます。
私はプロとして16年、小学生・中学生を対象に指導をしています。指導者資格としてJSPO公認陸上競技コーチを取得しています。
本記事では、速く走るための準備を、心(コンディショニング)・技(フォーム)・体(基礎トレーニング)の3つに分けて解説します。
読み終えるころには、速く走るための基本と、「なぜこの練習をするのか」という意味の両方がつかめているはずです。
この記事で分かること
- 速く走る準備を心技体の3方向から整える考え方
- 睡眠・食事などの生活習慣が調子に効く理由
- 腕振り・腿上げ・接地でフォームを見直す視点
- 家でできる基礎トレーニング5種目の中身
結論:速く走る準備は「心技体」のバランスで決まる

特別な才能がなくても、できることはあります。整えるのは、次の3つです。
- 「心」の準備:睡眠・食事・休息を整え、自分を信じる気持ちを持つこと
- 「技」の習得:腕振り・腿上げ・接地という、効率のいい走り方を身につけること
- 「体」の強化:走りを支える筋力を、無理のない範囲で養うこと
この3つがそろうと、運動会のスタートラインに、少し落ち着いた気持ちで立ちやすくなります。完璧を目指す必要はありません。少しずつ成長を感じながら、楽しく準備していきましょう。
ここからは、それぞれを具体的に見ていきます。
心:生活習慣を整えることが、コンディショニングの土台になる

「心の準備」と聞くと、精神論に思えるかもしれません。実際に整えるのは、睡眠・食事・休息という毎日の生活習慣です。
睡眠は、長さよりも質を意識してみてください。寝る時間と起きる時間をそろえるだけでも、体の状態は変わってきます。食事はバランスが基本。運動会の当日は、食べ慣れたものを適量に。当日だけ特別なものを用意する必要はありません。休息は、疲れを翌日に持ち越さないことに尽きます。疲れを残したまま練習を重ねても、力は積み上がっていきません。運動会の直前から当日にかけて、親ができる具体的な過ごし方や声かけは、運動会のかけっこ、直前1週間と当日にできることにまとめました。
この3つはどれも体の話に見えて、実は気持ちのほうに効いてきます。生活が整うと余裕が生まれ、「今日はいけそう」と思える日が増えていく。現場で子どもたちを見ていて、そう感じています。
逆に、「どうせ自分は遅いから」という思い込みが先に立つと、そこで足が止まりがちです。この思い込みについては、「運動神経は遺伝で決まる」って本当?運動が苦手な親御さんへ、コーチの答えでも触れています。
技:フォームは「腕振り・腿上げ・接地」の3点で見直す

技術トレーニングの中心はフォーム改善です。見るところは、3つに絞れます。
腕振り
肘を約90度に曲げ、前後にまっすぐ振ります。腕が横に流れると、その分だけ前に進む力が逃げていきます。振り幅は、力まずに出せる範囲で十分です。手のひらは軽く握る程度で、肩の力は抜いておきましょう。腕と足のリズムが連動してくると、走り全体がまとまってきます。
腿上げ(スイング・ドライブ)
脚を前に引き上げる「スイング」と、地面を押し下げる「ドライブ」の2つに分かれます。
スイングでは、膝を必要以上に高く上げないこと。高さより、前に運ぶ速さです。ドライブでは、足首を固定したまま地面を押します。足首がぐらつくと、せっかくの力が地面に伝わりません。蹴ったあとは素早く前へ。そこから次の一歩の準備が始まっています。
接地
足の前半分、母指球(親指の付け根のふくらみ)で着地します。かかとから入るとブレーキがかかるためです。着く位置は、体の真下あたりが理想。地面を真下に押すイメージで、接地時間は短く抑えます。
なぜこの3点なのかを、体の仕組みから知りたい方は、【小学生・中学生向け】足が速くなる仕組みとは?基礎知識3選を徹底解説も読んでみてください。
体:まずは家でできる5種目にしぼる

基礎トレーニングは、「技」で身につけたフォームを支える土台づくりです。種目を並べ立てるのは簡単ですが、たくさん覚えても続きません。家でできて、走りに直結するものを5つに絞ります。
プッシュアップ(腕立て伏せ):10〜15回×3セット 腕振りを支える土台です。肩幅より少し広めに手を置き、胸が床に近づくまで下ろします。腕振りは腕だけで振っているように見えて、実際は胸と肩が支えています。
スクワット:15回×4セット 腿上げの力、そのものです。膝が足先より前に出ないように気をつけて、太ももが床と平行になるまで腰を落とします。5種目のなかでセット数を多めにしているのは、私が現場でいちばん重視している種目だからです。
ランジ:片足10回×3セット 走るという動きは、片足で体を支える動作の連続です。両足でのスクワットだけでは、その感覚は育ちにくい。前後・横と、向きを変えて行ってみてください。
カーフレイズ:20回×3セット 接地の一瞬で地面を押し返すのは、ふくらはぎです。両足でも片足でもかまいません。地味な種目ですが、踏み切りの力に直結します。
プランク:30秒〜1分×3セット 肘とつま先で体を支え、背中をまっすぐに保ちます。体幹がぶれると、腕振りも腿上げも力が逃げていく。5種目のなかで一番「速さ」から遠く見えて、実はフォーム全体を支えているのがこれだと感じています。
この5つ以外にも、レッグカールやステップアップ、体幹のバリエーションなど、家でできる種目はまだあります。物足りなくなってきたら、足が速くなる自宅トレーニング|小中学生が親子でできる練習メニューから次の1種目を足してみてください。
走る動きそのものを鍛えたいときは、ラダーやマーク走、坂道走のように、走りながら行うメニューが向いています。こちらは短距離走が速くなる練習メニュー|小中学生向けラダー・マーク走・坂道走にまとめました。
どの種目も、強度は少しずつ上げていくのが基本です。始める前に軽く体を動かして温め、終わったらストレッチで整えてください。準備運動のやり方は、【初心者向け】陸上競技の基本トレーニング|フォームと準備運動から始めようにまとめています。水分もこまめに。
回数はあくまで目安です。体力には個人差がありますから、お子さんに合わせて減らしてかまいません。回数をこなすことより、正しいフォームでできているかを優先してください。とくに小学校低学年のうちは、数を追わず「できた」で終わるくらいでちょうどいいと思っています。
膝やかかと、腰に「痛み」が出たら、その日は中止してください。筋肉痛とは別物です。成長期の体は骨や関節がまだ育っている途中で、大人と同じようには負荷を受け止められません。痛みが数日続くようなら、自己判断せず整形外科などの医療機関に相談してください。持病がある場合や、体調のすぐれない日も無理はさせないであげてください。
はじめのうちは、できれば保護者の方がそばで見てあげてください。この「どれくらいの強さでやるか」という考え方は、小中学生のトレーニング計画の立て方|成長期に合った運動強度の決め方で詳しく解説しています。
すべてを一度にやる必要はありません。できる種目から、少しずつ取り入れてください。
まとめ:今日できるのは「生活リズムを整えること」から
「心技体」は、どれか1つが飛び抜けても走りにはつながりません。生活が乱れていればフォームは崩れますし、筋力があっても振り方を知らなければ力は逃げていきます。3つがゆるやかにそろってきたとき、走りは変わりはじめます。
大切なのは、一度に完璧を求めるのではなく、続けていくことです。
まず今日できるのは、寝る時間を決めることと、鏡の前で腕振りを30秒やってみること。この2つなら、道具も場所もいりません。楽しみながら、自分のベストを目指しましょう!
